「薬屋のひとりごと」の物語に登場する猫猫(マオマオ)は、数え年17歳で後宮の下女として働いています。
幼い頃から薬屋で培った知識を活かし、後宮で起こる様々な事件の推理に加わることもしばしば。今回はそんな猫猫の正体や秘密、そして任氏との関係についてご紹介していきます。
薬屋のひとりごとの猫猫の正体
猫猫(マオマオ)は、人買いに連れ去られ後宮へとやってきました。
表情はいつも無気力そうに見えますが、実のところ非常に観察眼が鋭い存在です。口調は荒っぽい面が目立ち、常に「面倒臭い」という言葉を口にすることが多いです。
周囲からすれば、猫猫はどこか浮世離れした雰囲気を持ちながらも、必要なときには抜群の頭脳を発揮する不思議な人物です。面倒なことが嫌いという性格が災いしてトラブルに巻き込まれることもありますが、薬師としての腕前と冷静さを頼りに、危機を切り抜けていく姿が印象的です。
花街(歓楽街)の出身
猫猫は花街で生まれ育ったため、歓楽街の空気に染まった独特の感性と度胸を身につけました。
花街有数の妓楼である緑青館に所属していた母親と周囲の妓女らに囲まれて幼少期を過ごし、女性としての作法から身のこなしまで一通り叩き込まれました。
さらに、もと医官でもあった漢羅門が義理の親となったことで、薬学や毒に関する深い知識を徹底的に仕込まれます。そうした背景から、猫猫は花街のしきたりだけでなく、医術や調合にも通じるようになったのです。その一方で、人前では素っ気ない態度を取りがちですが、花街時代の経験が大きく影響しているからこそ、いざという場面で華やかさや大胆さを垣間見せることもあります。
養父に育てられる
猫猫の養父として存在感を放つ漢羅門は、もともと宮中に仕えていた医官という経歴を持つ人物。
退官後は花街へと戻り、薬屋として活動するうちに、まだ幼かった猫猫を引き取りました。漢羅門は普段は無口に見えますが、「根拠のない言動はするな」「事実であっても口にしてはいけないこともある」「自分の言動には責任を負え」という信条を厳しく叩き込んでいます。
こうした教えが、猫猫に「理詰め」で考える思考回路と、あえて黙して語らない慎重さを身につけさせた要因といえます。花街での薬屋経験と併せて、後宮に下女として入り込んだあとも、その知識と洞察力は周囲から一目置かれる存在となっているのです。
猫猫の性格
猫猫は細身でいかにも貧相に見えるうえ、肌にはシミやそばかすが多く残っています。
実はこのシミとそばかすは、自身の身を守ために、わざとつけたもの。醜女を演じることで、無用なトラブルを避けようとしている頭の良い女性です。
美貌の持ち主とは程遠いように映るため、周囲の男性からほとんど目を向けられません。しかし、この状態をまったく気にする様子もなく、むしろ恋愛沙汰を煩わしいと考えるあたりが猫猫らしさでもあります。
研究熱心で興味のある分野にはとことんのめり込み、「人体に作用する毒や薬の効果を自分の目で確かめたい」という実験的好奇心を見せることもしばしばです。その一方で、「マッドサイエンティスト」と称されるような一途な探求心が、事件解決や毒見など後宮でのトラブル対処に活かされている点は興味深いところです。
イケメンの任氏が苦手
猫猫は、絶世の美男子と評される壬氏(任氏)を苦手としています。
任氏のどこかねちっこい絡み方に困惑しつつも、本人なりにぞんざいな対応を取ることで距離を保とうとしています。しかし任氏にとっては、その扱いさえも特別扱いのように受け取っているフシがあり、ますます猫猫への興味が募っているようです。
加えて、ある人物の話題が出ると極端に嫌悪感を示す場面もあり、それを理解している任氏は、逆手にとって猫猫をからかうかのように振る舞うこともあります。そんな2人のやり取りは、時にスリリングでありながらもコミカルな掛け合いとして描かれており、読者を惹きつける要素にもなっています。
猫猫の誕生の秘密
猫猫の出生には複雑な事情が絡んでいるとされており、後宮へ連れ去られる前の人生にも波乱がありました。
花街で育った背景だけでなく、貴族層に属する名家とも縁があるため、生まれながらにして両親の問題がもつれ合う形で苦境に立たされることになります。実際、緑青館にとっても猫猫の存在は大きな意味を持ちつつ、一歩間違えば館を揺るがす騒動に発展しかねないほど重要な立ち位置でした。
そのため、猫猫には花街時代から常に危険がつきまとっていたといわれますが、その過去をよく知る人々は、周囲に真相を明かすことを避けてきた節があります。後宮での活躍とともに、やがて猫猫の誕生の秘密が少しずつ明らかになっていくのです。
秘密1.実は貴族の一人娘
猫猫は「羅」の一族と呼ばれる名家の血を受け継いでおり、茘国軍の最高実務統括者だった漢羅漢と、花街でも名高い妓女だった鳳仙との間に生まれた存在。
名家の出身とはいえ、その過程には両親が引き起こした問題が含まれていて、緑青館が経営危機に陥ったこともあったといいます。いくつもの困難を経た末に生まれた猫猫の立場は決して単純ではなく、当主の娘として名目上は高貴な身分でありながら、花街で育つという数奇な運命をたどることになりました。一
部の者からは「羅の姫君」と称されることもあるようですが、当人はその呼び名を嫌がっています。
秘密2.任氏のことが好きになりかけている
猫猫と壬氏の関係は、出会った当初こそ淡白なものでしたが、次第にやりとりが増えるうちに少しずつ打ち解ける様子が見られます。
任氏との逢瀬を重ねるうちに、猫猫はどこかしら安堵を感じてきた様子です。
たぶん猫猫が思う壬氏への気持ちは、燃え上がるような熱情ではない。壬氏が猫猫に対して思う気持ちを返すことはできないが、でも同時にこれだけ安堵を寄せられる人物はそうはいないと思いつつある。
身分も高く容姿にも恵まれた壬氏が、好奇心旺盛で我が道を行く猫猫に本気で惹かれている姿は、周囲から見るともどかしくも甘酸っぱいようぬ映る面もあります。それでも壬氏は隙を見せず、逆に新たな手段でアプローチしては、猫猫の興味を引き出そうとする展開が続くと思うと楽しみで仕方ありません。
秘密3.任氏と一夜を共にしようとしていた
猫猫は任氏と想いが通じた後も、自分の身の振り方を弁えています。
猫猫は任氏との子作りには消極的というか懐疑的。正妃となった玉葉妃と跡目争いを避けるべく、堕胎剤を用意して任氏の元に向かい、任氏に呆れられています。
「壬氏さまの気持ちを受け取った以上、関係を持ったとしてそれは私の合意です。でも、その合意にはけじめをつける必要があります。私は、玉葉后の敵になるつもりはありません」
あまりの行動に任氏があきれ顔を見せることもあったようですが、猫猫としては合理的な選択であるとの認識が強いよう。
ただ、この猫猫の行動を目の当たりにし、任氏は「自分の立場を明らかにしなければいけない」と思い立った様子です。猫猫に窮屈な思いをさせることが任氏の望みではありません。猫猫のさりげない行動が、任氏の今後を大きく左右していくことは間違いないでしょう。
まとめ
猫猫は花街で育ち、名家の血を引きながらも、後宮に身を置く下女として活躍するという不思議な経歴を持っています。
人買いに攫われた過去や、薬学に傾倒する姿勢、さらに任氏との関係性など、多くの要素が重なり合うことで物語に奥行きを与えている点が魅力です。口は悪いものの鋭い頭脳で事件の真相に迫り、誰もが扱いに困る場面でもあっさりと事態を解決してしまうところは、猫猫の底知れぬ可能性を感じさせます。
過去や家系の秘密が明らかになるにつれ、その存在意義はますます大きくなり、後宮や花街の人々を巻き込んでさらなる波乱を起こす予感があります。このように、猫猫の人生は波瀾万丈ながら、痛快なほどのマイペースぶりで読者を魅了してやまない存在といえるでしょう。